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社員ブログ

2022年11月23日  お知らせ 

【お知らせ】適格請求書発行事業者登録番号の登録完了について

2023年10月1日以降に開始が予定されている「適格請求書等保存法式(インボイス制度)」に関して、当事務所は適格請求書発行事業者の登録が完了しておりますのでお知らせいたします。

登録番号:T9810335719949

なお、「国税庁インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイト」からもご確認が可能です。

国税庁インボイス制度適格請求書発行事業者公表サイト

2019年3月18日  相続税法 

特例事業承継税制の概要

こんにちは、昭島市の税理士・大林央です。
平成30年度の税制改正において、現行の事業承継税制を改良して、対象株式数を100%、相続時の評価額を100%に拡大し、雇用確保要件の実質撤廃などを盛り込んだ「特例事業承継税制」が創設されました。その概要をサクッとまとめてみます。

★後継者に無税で事業承継できる

例えば6億円の非上場株式を相続時精算課税で贈与した場合、(6億円―2500万円)×20%=1億1500万円の納税が必要となりますが、この全額が納税猶予されます(免除ではないので注意)。贈与者が亡くなった時点で、当該贈与税は免除され、相続税の課税財産に取り込まれますが、一定の要件を満たすことで、今度はその株式に係る相続税が納税猶予されます。

「特例事業承継税制」は、推定相続人等以外に対しても相続時精算課税による贈与が可能ですが、親族外の後継者に相続時精算課税で贈与した場合でも、その非上場株式の評価額は贈与した時点の時価で相続税の課税価額に含まれてくるので注意が必要です。かなり昔に他人に贈与した株式の評価額が、事業に関係のない相続人の相続税額にも影響を及ぼすということです。

★適用を受けるための贈与から相続までの流れ

1.「承継計画」を都道府県に提出する ※この提出が大前提の必須条件

H30年4月1日からH35年3月31日までに認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けて作成した「承継計画」を都道府県に提出した場合に限り、特例事業承継税制が使えます。提出しなければ新税制は適用できませんが、提出したからと言って、必ず相続贈与をしなければならない訳ではないので、事業承継を控えた顧問先様についてはとりあえず提出してしまうというのも一つの手といえます。

2.「承継計画」の提出前に先代経営者が死亡した場合

「承継計画」の提出前に相続が開始してしまった場合、または、贈与した後に「承継計画」を提出した場合であっても、平成35年3月31日までに「承継計画」を提出すれば、特例承継事業承継税制の適用を受けることはできます。

3.適用を受ける為には一定の要件を満たす必要がある

【会社の要件】
①中小企業であること
②風俗営業をしていないこと
③資産管理会社でないこと

【先代経営者の要件】
①会社の代表者であったこと
※贈与の場合には、贈与までに代表権を返上しないとだめです。相続の場合は直前に代表者であってもなくてもよい
②「代表者であった時点」と「贈与相続があった時点」のいずれの時点でも「同族関係者で発行済議決権株式総数の過半数の議決権を有し、かつ、同族関係者間筆頭株主」でなければなりません
※外部資本が筆頭株主であっても、同族内で筆頭株主であれば大丈夫です

【後継者の要件】
(贈与の場合)
①20歳以上で、かつ、役員に就任してから3年以上経過
②贈与時点で代表権を有していること
③同族関係者と合わせて発行済議決権株式総数の過半数を保有し、かつ、その同族関係者の中に保有株式数の上位者がいないこと
④贈与の時から認定申請日までに引き続き贈与により取得した特例認定贈与承継会社の株式のすべてを保有していること

本税制は円滑な事業承継の実現のために、現行の事業承継税制の使い勝手を大幅に改良しました。便利ではありますが、税制の適用には、スケジュールの管理が面倒すぎるというのが印象です。慎重にも慎重を重ねて管理していかないと思わぬところで認定取り消し事由(報告・届出を怠ったとき)に該当しかねません。
打ち切り確定となれば2か月以内に納税が必要となります。事例によっては数千万円の納税になることも珍しくない訳で、この管理を第3者に任せる(例えば会計事務所)場合、会計事務所側もリスクを負うわけであり、管理に係る手数料もある程度高額にせざるを得ないでしょう。納税は猶予であって免除ではないのだから当然ではありますが、簡単に発動できない(なるべくしたくない)税制かもしれません。顧問先様の事情(現状だけでなく未来も)をよく話し合って考えていかなければなりません。

2019年3月11日  フリーランス 

特定口座内の株式譲渡・配当所得等の申告時の注意点

こんにちは、昭島市の税理士・大林央です。今週で確定申告も終了です。来年への申し送りの意味も込めて「特定口座内の株式譲渡・配当所得等の申告時の注意点」をまとめておきます。

一定の手続きをすることで、利子配当等を特定口座にて受け取ることが可能となります。これが「利子配当受け入れ源泉徴収選択口座」ですが、大変便利な制度で、例えば株式等の譲渡損失がある場合、同じ特定口座に受け入れた配当所得と自動的に損益通算してくれ、納めすぎた源泉所得税があれば還付手続きも特定口座内で完結させてくれます。

さて、この利子配当受け入れ源泉徴収選択口座における申告・申告不要の選択について“特定口座年間取引報告書”を見ながら説明してみます。ひな形を使用していますので金額の記載はありません。

申告・申告不要の選択を考えるうえで、上場株式等の譲渡所得等が黒字の場合赤字の場合とに分けて考えます。赤字の場合、特定口座内において譲渡損と配当等の額で損益通算されてしまっていますから、何もしないかその赤字を繰越すかの2択というケースがほとんどでしょう。赤字を切り捨てることはなるべくしたくないと考えれば、結論としては配当等の額についても申告分離を選択しましょうという流れが自然ではないでしょうか。(総合課税で配当控除が受けられないというわけではありません)

したがって今回は、ちょっと迷ってしまうんだろうなというケースとして、上場株式等の譲渡所得等が黒字の場合の配当等の額の申告の選択肢を考えたみたいと思います。

★上場株式等の譲渡所得等が黒字の場合
この利子配当受け入れ源泉徴収選択口座は次のいずれかの選択となります。
①譲渡等も利子配当もすべて申告しない
②譲渡等は申告、利子配当は申告不要とする
③利子配当は申告、譲渡等は申告不要とする
④譲渡等も利子配当もすべて申告する

特定口座内の株式譲渡・配当所得等の申告時の注意点

念のためですが、上の赤枠で囲んだ「特定上場株式等の配当等」と「上記以外のもの」は、いずれかだけを申告する又は申告しないという選択はできませんので注意しましょう。

この黒字のケースでは株式売買で譲渡益が出ていますから、特定口座内で課税済み(20.315%)な状態になっています。これをあえて確定申告するメリットは極めて低いというのが多数派でしょう。申告すれば所得の総額が増えてしまいますので国民健康保険や後期高齢者医療保険の負担割合に影響が出る可能性が高いです。ですから譲渡益が出た場合②を選択するケースは考えなくてよいと思います。

次に③、④を選択した場合、配当等の額の申告は次のア、イのいずれかの選択となります。
ア  いずれも申告分離で申告する。
イ「特定上場株式等の配当等」(赤枠の上側)は総合課税で、「上記以外のもの」(赤枠の下側)は申告分離で申告する。
ここでも注意点ですが、「特定上場株式等の配当等」については、例えば前出の表「特定口座年間取引報告書」の④「株式、出資又は基金」は総合課税で、⑦「オープン型証券投資信託」は申告分離で申告するということはできません。同一年中に受けた「特定上場株式等の配当等」(赤枠の上側)については総合課税か申告分離課税のいずれかしか選択できないからです。

さらにもう一点、イを選択し「特定口座年間取引報告書」の④「株式、出資又は基金」又は⑧「国外株式又は国外投資信託等」を総合課税で申告して配当控除を受けようとする場合、内国法人から支払いを受ける配当か否かのチェックが必要です。外国法人から受ける配当等は、配当控除の対象となりませんので。

おおざっぱですが、⑧「国外株式又は国外投資信託等」に記載金額があれば、その金額は概ね外国法人から受ける配当等ですから総合課税で配当控除を受けるという選択肢はなくなります。同一年中に受けた「特定上場株式等の配当等」については総合課税か申告分離課税のいずれかしか選択できないというルールがありますから、④「株式、出資又は基金」についても申告分離での申告しか選択できないこととなるわけです。

所得税について確定申告する場合、住民税にも影響が及びます。住民税については申告不要制度を選択する方が有利です。お住まいの市役所等に住民税は申告不要としたい旨の申告書を忘れずに提出しましょう。

以上、特定のケースに限定して考えてみましたが、特定口座で受ける配当等については取り扱いが非常に複雑です。自分の都合の良いように申告してしまうと、後々しっぺ返しを食らうことにもなりかねません。よく研究して適正な申告を実践したいものです。

2019年3月4日  フリーランス 

人を雇っているフリーランスは必見!所得拡大促進税制でガッチリ節税を!!

こんにちは、昭島市の税理士・大林央です。確定申告も大詰めです。忙しい時に限って無理な依頼が舞い込むもの。スケジュールが微妙ですがあと10日走り続けます(^^;

今日のテーマは「人を雇っているフリーランスは必見!所得拡大促進税制でガッチリ節税を!!」です。フリーランスの方、もうすでに申告を済ませた方も多いかと思います。もし人を雇っているなら「所得拡大促進税制」が適用できないか、今一度見直しましょう。適用要件は次の3つだけ。税理士さんにお願いしているからといって安心してはいけません、適用できるのに見逃してしまうケースが多いので注意です。

①雇用者給与等支給増加額の基準雇用者給与等支給額に対する割合が3%以上であること
②雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額以上であること
③平均給与等支給額が比較平均給与等支給額を超えること

と言われても全然見えてきませんよね(汗)

ざっくり言うと…
①平成30年における国内雇用者に対して支払う給与等支給額が平成25年分の給与等支給額に比べて3%以上増えていること
②平成30年の給与総額が平成29年より1円でも増えていること、さらに
③平成29年と平成30年の両年とも在籍していた雇用保険被保険者の年収が1円でも増えていること

この①②③のすべてをクリアすれば適用が可能となります。

このうち②は楽に判別できそうです。昨年の損益計算書の給与を見比べて増えていればクリアですから。ただし親族等に払う給与は除外しますので、そこだけは注意しましょう。

①については、25年時点でまだ事業を開始していなかった事業者の方もいるはずです。その場合、事業を開始した年の給与等支給額×0.7が基準雇用者等支給額になります。平成30年中の支給額がその0.7に相当する金額以上であれば要件クリアとなります。創業期なので優遇があるのですね。

さて、要件をクリアした場合、どれだけ節税効果があるのか...
{(平成30年の給与額)-(平成25年の給与額)}×10% です。
これはそこそこな金額になります。

仮に平成30年中に開業して給与を200万円支払っていたとすれば
{(200万円)-(200万円×0.7)}×10%=6万円 です。
所得税の20%までという上限があるものの看過できない節税額です。

ちなみに内容を複雑にしないため、各用語も適切でないものがあったり、年換算等も無視しています。実際適用する場合には細かいチェックが必要になりますので、下記のリンク等でご自身で確認していただく必要がある旨はご了承ください。
くれぐれも人を雇っていれば適用できる確率は相当高いということです。
節税にもいろいろありますが、この税制はお金のかからないまっとうな節税です。手間がかかるからというのは理由にしてはいけません。ぜひ積極的にチャレンジしてください。

※国税庁タックスアンサー No.1282 雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除
※経済産業省 用語の定義等についてよくあるご質問

2019年2月25日  フリーランス 

不動産所得 火災保険と修繕費 フリーランスは処理に注意

こんにちは、昭島市の税理士・大林央です。確定申告の真っ最中。そこそこ忙しい毎日ですが、日程調整に注意しつつ、あと半月少々でなんとかしないとです。少し疲れました…

さて、不動産所得の計算をするうえで迷いがちな論点で修繕費があります。原状回復なら修繕費、資産価値が上がったり耐用年数が伸びる場合は資本的支出とする。これが基本的解釈ですが、たまに「むむむ」と思う論点も出てきます。それが今回のタイトル「不動産所得 火災保険と修繕費 フリーランスは処理に注意」です。

不動産について災害その他の事故があり、修繕する必要が生じることもあるでしょう。火災保険の適用により保険金が事業者に入金され、それを元手に修繕したとします。事業者が手にしたこの保険金は収入計上の必要があるのでしょうか。

実はこの保険金、丸ごとすべて非課税となります。

仮に100万円の保険金がおりて修繕費に50万円かかった場合、差額の50万円が非課税として取り扱われます。手許に50万円が残りますがそこに税金は一切かかりません。

逆に保険金が50万円しかおりないのに修繕費に100万円かかった場合、不動産所得の計算上修繕費として計上できるのは50万円だけとなります。

所得税法
(非課税所得)
第九条 次に掲げる所得については、所得税を課さない。
十七 保険業法(平成七年法律第百五号)第二条第四項(定義)に規定する損害保険会社又は同条第九項に規定する外国損害保険会社等の締結した保険契約に基づき支払を受ける保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含む。)で、心身に加えられた損害又は突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得するものその他の政令で定めるもの

所得税法施行令
(非課税とされる保険金、損害賠償金等)
第三十条 法第九条第一項第十七号(非課税所得)に規定する政令で定める保険金及び損害賠償金(これらに類するものを含む。)は、損害保険契約に基づく保険金その他これらに類するもの(これらのものの額のうちに同号の損害を受けた者の各種所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補てんするための金額が含まれている場合には、当該金額を控除した金額に相当する部分)とする。

※下線部分は筆者編集

 ちなみに棚卸資産の損害にかかる保険金や、営業休止など理由によりその間の収益の補償として支払いを受ける保険金は、収入の金額に計上する必要がありますので注意しましょう。また、法人の場合、もらったものはすべて収入、かかったものはすべて費用として認識します。

法人とフリーランスでは取り扱いが異なりますので知っておくとよいでしょう。

2019年2月18日  フリーランス 

自家用車の費用を事業経費にしたい

こんにちは、昭島市の税理士・大林央です。確定申告もここまでは順調に推移しています。この時期一番注意すべきは、何よりも「体調管理」。元気があれば何でもできます、たぶん…

さて、先週の記事の流れですが、今週はもう一歩踏み込んで家事関連費について述べたいと思います。「自家用車の費用を事業経費にしたい」と考える方は多いでしょう。今まで家事用で使用していた乗用車をどうやって事業経費に計上するのか、そのあたりを考えてみます。

まずは大切な前提ですが、自動車の使用目的、用途は明確になっていますか。材料の買い出しで使う、お客様宅への打ち合わせ訪問時に使うなどの理由が一般的だとは思いますが、事業に関連する使用であることをきちんと説明できることが「事業経費」に計上する前提ですので再確認いただければと思います。

自動車に関連する費用は多いですが、例えば自動車税、重量税、車検費用、自賠責保険、任意自動車保険、ガソリン代、洗車代、パーキング代などがあります。これらの支出は領収証の金額のうち事業割合部分のみを事業経費として計上していくだけですから、割合さえ決まれば問題ないでしょう。ややこしいのは減価償却費の計上です。

減価償却という手続きは自動車の取得費用を数年間にわたって少しづつ経費にするというもの。金額も高額になりますし、売上への貢献も数年に渡るわけですから買った年の費用として一度に経費にできないルールになっています。

そこでちょっと悩むだろうという事例です。

【事例】これまで家事用に使用してきた乗用車(2015年2月新車購入、取得価額300万円)を2018年7月の開業と同時に事業用としても使い始めました。

【計算方法】(1)から(4)までの手順に沿って計算します。

(1)非業務用期間の耐用年数
一般的な乗用車の耐用年数は6年なので
6年×1.5=9年(1年未満の端数切捨て)(所令85②一)
(2)非業務用期間(旧定額法による)の償却費(所令85①)
{300万円-(300万円×10%)}×0.112(※1)×3年(※2)=907,200円
※1)耐用年数9年の旧定額法の償却率
※2)2015年2月~2018年7月までの期間は3年5か月ですが、端数処理は6月以上は1年とし、6月未満は切り捨てますので3年(所令85②二)
(3)業務開始時点の未償却残高
300万円-907,200円=2,092,800円
(4)2018年分の償却費の計算
300万円×0.167(※1)×6月/12月(※2)=250,500円(このうち業務使用割合だけが減価償却費として計上できます)
※1)耐用年数6年の定額法の償却率
※2)2018年7月開業なので当年は6か月分が対象
2018年末現在の未償却残高は2,092,800円-250,500円=1,842,300円となります。

いかがでしょうか。多少手間はかかりますが、順を追って確認すれば複雑な計算はありません。

下記のリンクも参考にぜひチャレンジしてみてください。

国税庁タックスアンサー
No.2109 新築家屋等を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却

2019年2月12日  フリーランス 

自宅事務所で家事関連費を経費にできるか

こんにちは、昭島市の税理士・大林央です。連日、税理士会の会務で慌ただしい毎日です。

さて、本日は「自宅事務所で家事関連費を経費にできるか」です。フリーランスの方が自宅の一部分を事務所として利用するというのはよくあるケースでしょう。

売上を上げるため、事業のため、であれば問題なく経費に出来そうですが、実はこの家事関連費、原則として必要経費にできません。ただし、取引の記録などに基づいて業務遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額に限って経費計上が認められるというのが正しい解釈です。合理的な説明ができるのであれば認めますよというスタンスですから計上根拠の検討が必要になるのですね。

(参考)国税庁タックスアンサー No.2210 やさしい必要経費の知識

【根拠法】所法45① 所令96 所基通45-1

それでは家事関連費のうち経費にできるものにはどういうものがあるのでしょうか。
私なりの分類ですが、だいたい次の3つでしょうか。
①光熱費・通信諸経費、②住宅関連費、③車両関連費

①の光熱費・通信諸経費。
列挙すれば、電気代、ガス代、水道代、固定電話代、携帯電話代、インターネット代、新聞代、等々

事業と家事での按分基準に迷いますが、活動日・作業時間等の実状に合わせて〇〇%と決めてしまうしかありません。例えば固定電話は業務用FAX受信専用で家事用にはほぼ使わないというのであれば70%~90%経費としても説明できそうです。また、週3日程度の作業でたまにコーヒーを飲む程度ならガスや水道は10%~15%程度が妥当かもしれません。この辺りは正解があるわけではないので、第3者に説明して納得感があれば問題になるケースは少ないはずです。心配な方は税務署に聞いてしまうのもアリでしょう。

②の住宅関連費
賃貸物件なら家賃、駐車場代など。持ち家ならば、建物の減価償却費、固定資産税、火災保険料、住宅ローンの利息部分(元本部分はダメです)あたりでしょうか。住宅ローン控除を受けている場合には事業専用割合が増えるほど住宅ローン控除額が減る仕組みなので慎重な試算が必要です。(事業での使用面積が総床面積の10%以下であれば住宅ローン控除は満額受けられます)

(参考)租税特別措置法に係る所得税の取扱いについて|国税庁 措置法通達41-29

一方で素朴な疑問も湧いてきます。
奥様が自宅で開業したとします。自宅関連費を計上したいのですが、自宅の名義(賃貸なら契約者)がご主人だった場合、かかった費用を奥様の事業の必要経費に算入して問題ないのだろうか…
結論はご主人名義の家事関連費も問題なく奥様の事業経費に計上できます。普通、ご主人名義の不動産を事業に使うからと言ってご主人に家賃など払いません。仮に払っても生計一親族への払いなので所56条で経費にできませんし。ただ、夫の有する資産を無償で当該事業の用に供している場合は、奥様の事業の必要経費に算入して構わないと言っています。家事支出(事業主借)として経理すれば問題ありません。所56条がらみ(家族間の所得分散を封じようとした規定)なので、考え方がややこしいですが、下記の国税庁へのリンクで確認してみましょう。

(参考)(親族の資産を無償で事業の用に供している場合)所基通56-1

③の車両関連費
減価償却費、自動車税、重量税、車検費用、自賠責保険、任意自動車保険、ガソリン代、洗車代、パーキング代

これらの領収証は漏れなく整理保存しておきましょう。按分比率は走行距離を基準にするのが最も納得感があります、ただ難しいケースもあるでしょう、その場合は活動日を基準にする方法も認められるはずです。仕事は平日のみで土日は業務をしないのであれば5/7(≒71.4%)としても否認されるケースは低いでしょう。ここでも第3者に説明して納得してもらえるか、一度決めた基準は一貫しているか等が大切になってきます。

冒頭で「明確に区分」された部分だけが必要経費にできると書きました。確かに適正な判断は必要なのですが、そこをあまりにも厳格にしてしまうとかえって必要経費にできる範囲が極端に狭くなり、適正な所得計算がなされなくなるという弊害も考慮すべきです。家事関連費を適正にもれなく事業経費にするためにできる手は尽くしましょう。

2019年2月4日  相続税法 

代償分割と換価分割

こんにちは、昭島市の税理士・大林央です。昨日の晩からの寒波で一段と寒くなりましたね。
さて、今日は遺産分割の方法の一例を。

相続が発生して現金などの流動性の高い財産ばかりであればすぐに分割できますが、財産が土地などの不動産しかない場合単純にはいきません。公平性を保ちつつ各相続人に納得のいく分割方法がないかを考えるうえで「代償分割」「換価分割」という方法があります。

「代償分割」とは、不動産を相続人の誰か一人が単独で相続し、その代わりに他の相続人に対して現金等を支払うことで遺産分割に決着をつける方法です。これは 相続した不動産を手放したくない場合や不動産を相続した人が代償金弁済のための現金をすぐ用意できる場合によく用いられる方法です。

しかし、代償金弁済のための資金がない場合には問題が生じます。まず相続する予定のその不動産を売ってその売却代金を他の相続人に渡さなければなりません。不動産を売ったわけですから、売った人には譲渡所得が課税されることになります。この課税されること自体はしょうがありません、収入があったわけですから。ただし「代償分割」の場合、その不動産の取得者のみが譲渡所得にかかる税金を負担することとなってしまいます。しかも、譲渡所得の計算上、支払った代償金は譲渡費用等に含まれません。結果的に不動産の取得者の税負担は大変重いものとなってしまいます。

そこでもう一つの方法である「換価分割」を検討する必要が出てきます。

「換価分割」とは、その不動産を未分割のままで他人に譲渡して、その売却代金を相続人どおしで分配することで、その代金分配の割合によって譲渡した現物財産を取得した効果を生じさせる分割方法です。この方法であれば流動性の低い財産しかない場合であっても公平な分割が実現できます。さらに、譲渡所得の計算でも、その代金の取得額がそのまま各人の譲渡収入となりますので、だれか一人に譲渡所得が偏ることもなく非常に合理的で公平な分割方法といえるのです。

この「換価分割」を選択し、譲渡する土地について相続人名義へ取得登記する方法ですが、法定相続分で共有登記すれば問題ありません。もしくは、単独名義で登記をした場合であっても遺産分割協議書において「換価分割である旨」を明示しておけば大丈夫です。あとから思いがけない認定課税を受けないためにも税理士や司法書士等の専門家の助言のもと進めていくことが手続き上は安心といえそうです。

2019年1月28日  相続税法 

家なき子特例の改正とは

こんにちは、昭島市の税理士・大林央です。 今日は午後から昭島で研修会です。夜は補助金関係の勉強会&打合せです。

先日、相続の実務において小規模宅地等の特例の適用の有無を検討する際、特例対象宅地等の要件を見直す機会がありました。その際、30年で税制改正された「家なき子特例」の改正を確認して「うーん」と感じた点を少々。

平成30年4月1日以後に相続又は遺贈により取得をする宅地等に係る相続税について、特定居住用宅地等の要件が変わっています。いわゆる「家なき子特例の改正」です。

家なき子特例の趣旨は、一人暮らしの被相続人の居宅を、持ち家がない親族(家なき子)が相続すれば、330㎡を限度として土地の評価額の80%減額が受けられるというものです。いわば空き家になった実家の税制面からの保護とも言えます。

これまでは相続開始前3年以内に日本国内にある自己、自己の配偶者が所有する家屋に居住したことがないことが要件でした。(その他の要件への言及は省略しています)

つまり相続開始前3年の間、相続人に持ち家がなければ要件クリアでした。ところがこれを悪用して不自然に持ち家のない状態を作り出す等の行為(自宅を子や孫に贈与して持ち家がない状態を作り出す等)が横行した結果、今回の改正に至ったようです。

どう改正されたかというと、相続開始前3年以内に日本国内にある自己、自己の配偶者、自己の三親等内の親族又はその親族と特別の関係にある一定の法人が所有する家屋に居住したことがないこと、とされました。

「3親等内親族」という制限により、要件がかなり厳格化されています。

東京に実家のある長男が、北海道の叔父(実父の兄なので3親等)の家に下宿していました。そこで東京の実家に相続が発生した場合家なき子特例が使えないということです。用件だけ見るとこれは厳しすぎる気もします。

今後の実務への影響次第ではもう少し要件を緩和させるような改正があるのではないでしょうか。いずれにしても年々改正が相次いでいますので、要件等の確認には注意していかないとなりません。

2019年1月21日  所得税法 

法人設立で節税ってどういうこと?

こんにちは、昭島市の税理士・大林央です。 先日、税理士会の税金相談会で質問された件、「法人設立で節税ってどういうこと?」についてです。

起業するにあたり、個人事業主で始めるか法人で始めるかについてはいろいろな考え方があります。私なりの意見ですが、つまるところ取引先次第なのかなと思っています。創業融資についても個人か法人かで差はありません(某金融機関談)。得意先様が「法人でないと取引できないよ」というスタンスなら法人で起業、個人という立場でも取引上不利にならないのであれば個人事業主で構わないのではないでしょうか。

小さく始めて大きく育てるという意味でも、個人事業から始めて業績が軌道に乗り始めたら法人化を検討する流れが一般的だと思います。

そして実際に事業が成長していくと、会社組織での運営を意識し始めます。いわゆる「法人成り」です。法人を設立すると節税になるらしいけど・・・どういうこと?

今回は細かい点には言及せず所得税と法人税の税率に焦点を当てて大枠をご説明したいと思います。

例えば、個人事業で、売上2,000万円、経費800万円の方の所得税です。
事業所得は2000万円-800万円=1,200万円
この1200万円から青色申告特別控除65万円と基礎控除38万円のみを考慮します。
課税所得は1200万円-65万円-38万円=1,097万円となります。
所得税:1,097万円*33%-1,536,000円=2,084,100円となります。
(※単純化するために復興税等の細かい論点は省いています)

この個人事業主が、法人を設立し社長になった場合どのようになるでしょうか。

会社の売上2,000万円、経費800万円、月100万円の役員報酬を社長自身に支払ったとします。この場合、2000万円-800万円-1200万円=0円 ですから、法人の課税所得はありません。税金は法人住民税(均等割)の7万円だけとなります…①

一方、社長の所得税を計算します。

役員報酬は給与所得控除が使えるので、給与所得:1,200万円-220万円(平成30年分の給与所得控除額)=980万円
この980万円から基礎控除38万円のみを考慮します。
課税所得は980万円-38万円=942万円となります。
所得税は、942万円*33%-1,536,000円=1,572,600円となります…②
①と②の合計が1,642,600円となります。

つまり、個人事業の場合の所得税2,084,100円と、法人化した場合の法人住民税と所得税の合計1,642,600円を比較すると法人化によって441,500円の節税効果が出ることとなるのです。

これが「法人設立で節税」の大枠です。個人の所得に連動する税金としては所得税の他に、住民税、国民健康保険税、社会保険料などがあります。これらを総合的にシミュレーションしてみればより具体的な試算が可能となるでしょう。

法人成りすることで節税スキームのバリエーションは格段に増えます。これについてはまた別の機会に触れてみたいと思います。

2019年1月13日  相続税法 

自筆証書遺言の方式緩和

こんにちは、昭島市の税理士・大林央です。今週はインフルエンザの猛威に屈し、丸3日間高熱にうなされるという悪夢の一週間でした。家族のうち予防接種を受けていない2人だけが感染するというやられっぷり。次回は確実にインフルエンザワクチンを受けなければです(猛省)

さて自筆証書遺言の方式緩和のお話です。2018年7月の民法改正により、本日2019年1月13日以降に作成される自筆証書遺言から、その方式が緩和されています。(新制度に移行)

相続のトラブルを避けるために遺言は有効な手段です。遺言には本人が口述したものを公証人が筆記し原本を公証役場に保管してもらう「公正証書遺言」と、本人が遺言の全文・日付・氏名等を手書きで書き上げる「自筆証書遺言」とがあります。

今回改正になったのは後者の「自筆証書遺言」に関する部分です。

全文手書きから財産目録はパソコンでの作成も可能に

改正前の「自筆証書遺言」では文字通り全文を自らが手書きで書き上げる必要がありました。「公正証書遺言」に比べて費用もかけずに手軽に作成できる反面、やはり全文を手書きでというのは負担感が大きいもの。財産の数が多いほどその負担は大きくなります。

今回の改正により、遺言書のうち財産目録をパソコンで作成することがOKに。さらに預金通帳のコピーや不動産の登記簿謄本のコピーなどを添付することで財産目録の代わりにすることも可能となりました。(この場合、各ページごとに本人の署名押印が必要 ※偽造防止のため)

さらに今後は「自筆証書遺言の保管制度」がスタートする予定です(2020年7月10日より)。これにより自筆証書遺言の欠点である紛失や、書き換えられたりする心配はなくなりそうです。保管時には法務局側で形式チェックも行われますので、形式不備も少なくなるでしょう。

「自筆証書遺言」は今まで以上に使いやすく改正されていきますが、それでも万全ではありません。遺言書を探すのは残された相続人の仕事。家族が法務局に問い合わせしなければ遺言書は表に出てきません。遺言は亡くなったご遺族の最後の伝言です。その所在を家族で共有していくことが重要なのは言うまでもありません。

2019年1月7日  所得税法 

小規模企業共済で節税

こんにちは、昭島市の税理士・大林央です。 今日は「小規模企業共済で節税」です。フリーランスの節税は法人に比べて打てる手に限りがあります。ウルトラC的な裏技があるわけでもなく、できることを確実に積み上げていくことが最も堅実で、間違いのない方法なのだと思います。

フリーランスとして独立したら、青色申告はおそらく常識でしょう。

65万円控除、家族への給与が経費になる、損益通算できる、赤字を繰り越せる…などなど。ノウハウ本を見れば、開業届と青色承認申請はセットで提出しましょうと書いてありますよね。会計ソフトで正しく記帳をすれば65万円の控除が受けられるわけですから効果絶大。ただし、開業から2月以内に提出ですから期限には注意が必要です。

さて、今回のタイトルにもあげて私がお勧めしているものに「小規模企業共済」があります。小規模企業の経営者や役員の方が、廃業や退職時の生活資金などのために積み立てる共済制度なのですが、税制上のメリットにとどまらない大変使い勝手の良い制度なのです。

まず、掛金が全額所得控除できるという税制メリットがあります。

例えばある年に思いがけず業績が好調で想定外の利益が出てしまったとしましょう。そのままであれば税金の支払い額は当然増えてしまいます。こういったときに「小規模企業共済」の前納制度を利用するのです。向こう一年間の掛け金を一括で支払うことができ、全額がその支払った年の所得控除として認められるのです。支払額は積み立てですから経費になる貯金のようなものです(実際には解約返戻時に課税されるので繰延なのですが)。年間84万円が限度とはいえ利用しない手はありません。

ただし、掛金納付月数が、240か月(20年)未満で任意解約をした場合は、掛金合計額を下回りますので、なが~いお付き合いを覚悟する必要はあります。それでも最低掛け金は月額1,000円ですから、解約せずに続けていくことは可能なのではないでしょうか。

万が一の場合、事業資金の借入れもできるので、利用価値は高いでしょう。個人事業から法人成りした場合でも、掛金納付月数の通算(同一人通算)をする際の手続きもありますので安心して始められます。

今年、もし大きく利益が出て節税方法を探しているフリーランスの方がいればこの「小規模企業共済」を始めてみるのも一案かと思います。

2018年12月31日  税金 

QRコードを利用したコンビニ納付

こんにちは、昭島市の税理士・大林央です。 平成31年1月4日からQRコードを利用したコンビニ納付が始まります。自宅等において納付に必要な情報(氏名や税額など)をいわゆる「QRコード」として作成することで、コンビニで納付書を出力できるようになります。

手順は次の通りでいたって簡単です。

①自宅等で作成・出力した「QRコード」(PDFファイル)をコンビニに持参
②「Loppi」や「Famiポート」に読み取らせることによりバーコード(納付書)が出力
③このバーコード(納付書)によりコンビニのレジで納付

納付用QRコードの作成には、2つの方法が用意されています。1つは国税庁HPの「確定申告書等作成コーナー」で、「住所・氏名等入力」画面に表示される「納付用QRコードを作成する」を選択(チェックボックスをクリック)し、申告書の作成(印刷)と併せて、納付用QRコードを作成(印刷)する方法です。もう一つは、紙で申告書を作成した場合であっても可能なケースで「コンビニ納付用QRコード作成専用画面」において、納付に必要な情報(住所、氏名、納付税目、納付金額等)を入力することでQRコードを作成する方法です。

すべての税目で利用可能(加算税、延滞税等の納付も可能)ですが、利用可能額は30万円以下となっています。ただし納付は現金のみに限られています(クレジットカードや電子マネーによる納付はできません)。手数料は不要ですが領収証書は発行されません(払込金受領証は発行されます)ので、領収証書が必要な方は、QRコードではなく、従来通り手書きの納付書により最寄りの金融機関又は所轄の税務署の窓口で納付する必要があるようです。

また、コンビニ納付をした場合、納付済の納税証明書の発行が可能となるまで、3週間程度かかる場合があるため、利用の際には注意が必要です。

いずれにしても、わざわざ金融機関に行く必要がなくなり、24時間いつでも納付が可能となるわけで納税者にとってはかなり便利になりそうですね。

2018年12月25日  所得税法 

フリーランスのクレジットカード管理法

こんにちは、昭島市の税理士・大林央です。 本日は「フリーランスのクレジットカード管理法」について考えてみたいと思います。

経費はすべて振込か現金払いですという方は別として、事業経費の決済にクレジットカードを利用している方がほとんどでしょう。2枚、3枚と使い分けている方もいるはずです。

【第1法】

このクレジットカードの利用、取引としては経費の後払いです。例えば消耗品をカードで買いました。この場合の仕訳は

消耗品費 〇〇円/ 未払金 〇〇円(決済される口座が事業用の口座が前提)

となります。カード決済の都度、上記の仕訳を通して未払金を計上していきます。カードが複数ある場合には、未払金という勘定科目に「JCBガソリン」とか「VISA経費」などの「補助科目」を設定しておけばより明確です。カードをいくら利用しているのかをリアルタイムで把握できますので、資金繰りの計算も正確にできるでしょう。入力の済んだ領収証は利用明細が発行されるまでの間、クリアーファイル等で保存しておきましょう。

そして支払日の仕訳としては

未払金 〇〇円/ 普通預金 〇〇円

という仕訳で精算して終了です。

【第2法】

「第1法」はさすがに厳しいぞという場合、もう少し緩めの経理として、カードの支払明細書が発行される都度記帳する方法もアリです。実務ではこのパターンが一番多いかもしれません。領収証をとりあえず保存しておき、利用明細が発行されたら記載された明細と保存しておいた領収証を突合します。まとめて記帳しますから日々の記帳という手間はありません。仕訳は【第1法】と同じです。支払額の合計額と未払金の合計額が一致していることを確認しておきます。

(締め日)消耗品費 〇〇円/ 未払金 〇〇円(領収証を個別に仕訳します)

(支払日)未払金 〇〇円/ 普通預金 〇〇円

どちらの方法であっても、利用明細の後ろにA4の裏紙を用意し、領収証を貼付して合わせて保存しておけば証拠帳票としては合格でしょう。

★課税事業者は注意

消費税の課税事業者である方については、注意が必要です。原則課税では帳簿の記載と合わせて請求書等の保存が仕入れ税額控除の要件となっています。クレジットカードの利用明細はこの保存すべき請求書等として認めれていませんので必ず領収証を保存しておく必要があります。注意しましょう。

【第3法】

ここまでは、決済される口座が事業用の口座である前提で話を進めています。事業で使うカードなのだから事業用口座で決済するという発想が自然ですし、そのように処理しているフリーランスの方も多いでしょう。

ところがです。以外に管理が楽でおすすめなのは、クレジットカードの決済を家事用の口座に設定してしまう方法です。利用の都度、「事業主借」(じぎょうぬしかり)で処理してしまいます。例えば携帯の料金をクレジットカード払いしていて、決済口座が家事用口座の場合…

(月末)通信費 〇〇円/ 事業主借 〇〇円

支払日に未払金を消し込む仕訳も不要です。楽ですよね。

【まとめ】

以上、青色申告の65万円控除を受けるには複式簿記での記帳が必要です。【第1法】~【第3法】はいずれでも認められますのでご自身に合う方法で記帳を進めていただければと思います。

2018年12月17日  所得税法 

専従者給与の適正額とは

こんにちは、昭島市の税理士・大林央です。 フリーランスの方々からよく受ける質問に「専従者給与の適正額とは」というものがあります。

前置きを含めてご説明しますが、まず所得税法の大前提として、生計を一(一つの財布で生活しているという意味です)にする配偶者その他の親族に支払う給与賃金は必要経費になりません。ただし青色申告の場合、「事業専従者」の【要件】を満たせば、家族へ支払った給与であっても、その全額が必要経費として認められます。これが「専従者給与」というものです。

青色事業専従者給与として認められる【要件】は、次のイ~ロのいずれにも該当する人をいいます。

イ 青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること。
ロ その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること。
ハ その年を通じて6月を超える期間、その青色申告者の営む事業に専ら(※)従事していること。

このうち(※)にある「専ら」は判断に迷うところです。「もっぱら」ですから他に職業があれば「専ら従事」には該当しません。

ところがです。

仮に奥様がパートにでている場合は「専ら」とは言えないのでしょうか。これについては個別の判断とはなるのですが、例えばパートに従事する時間が短く、事業に専ら従事することが妨げられない程度だと判断できれば、一般的には問題ないと考えられます。常識的に考えれば、少なくとも専従者として従事する時間を超えてパートに出て働いていては専従者とは言えないと判断されても仕方ありません。

なお、青色事業専従者で給与の支払いを受ける場合は、たとえ給与収入が103万円以下であっても配偶者控除又は扶養控除の対象とはされません。つまり、青色事業専従者になると扶養から外れるのです。扶養控除を受ければ38万円の控除が受けられるわけですから、それ以下の給与を支給して経費にしたところで節税効果としては逆効果、意味のないものになってしまいます。金額の設定には注意が必要です。

専従者給与の適正額(さじ加減)は?

じつはこの判断は非常に難しいのです。例えば、一日4時間程度の事務仕事を週に3日手伝っている奥様に30万円支給したとします。仮に月50時間従事していたとすれば時給は6,000円にもなります。奥様が専門的な資格をお持ちの場合を想定しても、第3者に説明して納得してもらえるでしょうか。

この問題における判断基準はズバリ、「常識に照らして考える」です。つまり「もし他人にその仕事を依頼した場合いくら払いますか」ということです。

2018年10月1日より、東京都の最低賃金は時間額985円です。上記の事例のように月50時間程度の従事時間であれば、仮に時給1,500円程度で計算すると75,000円という金額が算出できます。専従者にこの程度の給与で意味があるのかどうかという問題を除けば、一般的には許容される範囲かなという気はします。

いずれにしても第3者に説明して納得させる根拠があれば問題ないわけですが、最終的には税理士や税務署に相談するなりして他人の判断を仰ぐこと、他人の感覚を聞いてみることをお勧めします。素人判断で決めてしまうことは避けたいところです。

2018年12月7日  所得税法 

フリーランスは生活費をどう管理するか

こんにちは、昭島市の税理士・大林央です。 先日、立川青色申告会にてフリーランス向けの記帳をテーマに講師を担当して参りました。そこで「フリーランスの生活費をどう管理するか」という点について話をしましたので内容をまとめてみます。

法人の場合、経営者である社長に支払う生活費(役員報酬)は経費として認められます。毎月支給される給与で生活していきますので管理もしやすく、経理処理としては理解しやすいものです。

一方でフリーランスの場合、同じように事業用の口座から経営者である個人事業主に生活費を支払う訳ですが、法人と違って支払った生活費を経費として認識していくことができません。(経費の勘定科目が使えないルールがあるので)

考えてみれば当たり前で、そもそもフリーランスとは儲かり分を事業所得という区分で課税されるべき人達です。それゆえに売上から経費を引いた残額(=事業所得)を算出するために日々記帳しているのです。そうやって算出した事業所得に税率を掛けて税金を計算させたい訳ですから、その記帳の過程で生活費としての支出を給与のような経費として認めてしまえば、事業所得として課税すべき金額の一部を給与所得という区分で課税させる金額に流せてしまうことになります。これはさすがに認めてもらえません。

さてさて話を元に戻しますが、生活費として引き出す現金。ここで記帳ミスしやすいポイントがあります。お金の動きとしては預金口座からお金を引き出すわけなので、ついつい

現金 ○○円/ 普通預金 ○○円

という仕訳で処理してしまいます。12か月間、生活費を引き出すたびにこの仕訳で処理し続けた結果、年末の現金残高が数百万円という状態になるわけです。引き出した現金はその都度生活費として消費しているわけですから当然、手元にそんな現金は存在しません。現金の実際の残高と帳簿残高が合わないという残念な結果が待っています。

それではどうすればいいのか。結論として、生活費として引き出した現金は事業主貸(じぎょうぬしかし)という科目で処理をします。具体的な仕訳は次の通り…

事業主貸 ○○円 / 普通預金 ○○円

生活費を含めた家事費の支出はすべてこの「事業主貸」として処理します。これはルールなので覚えるしかありません。※ちなみにこの「事業主貸」は家事経費の支出のための勘定科目なので必ず借方(左側)に配置されます。○○ / 事業主貸 という仕訳は正しくありません。

さて、「フリーランスの生活費をどう管理するか」という論点に戻りますが、方法はいたって単純。事業経費と家事費を明確に分離させること、これに尽きます。まず、事業用の口座と家事用の口座は完全に分離させます。さらに事業用の口座から生活費用の口座に振り替えるのは原則月1回、定額を毎月同じ日に資金移動させるのです。

そして家事関連費(生活費、食費、医療費、所得税、住民税、交通反則金、国民健康保険税、国民年金、生命保険料など)は事業用口座からは支払わないようにするということ。仮にこれらの支払いに事業用口座を使えば、その都度「事業主貸」で管理することになり、処理が煩雑になるだけです。

経費にならない支払い(家事関連費)を把握して支払い口座を整えれば事業主貸の面倒から解放されます。そのために上記の事業経費と家事費を明確に分離させる方法を徹底させることが大切なのです。